天からの洪水(ISBN:4105353012)・読了

帯の「それはトロイだった!」という惹句が非常に強烈な印象を与えますが、本書はアトランティス=トロイ説を提唱するための本ではありません。

本書の主題は、青銅器時代の地中海の諸国家の情勢を、状況証拠とテキストから
推測してみよう、というものです。
トロイ(イリオス)とアトランティスの類似性は、情報を補完するための重要なカギなんですが、まあ、人によっては詐欺っぽく見えるかも。

個人的には、「オデュッセイア」が「イリアス」の前後−トロイア戦争の遠因と戦後のアカイア文化の衰退の過程−を埋める意図がある、という解釈は、物的証拠などないこともあって文学的に過ぎる気もしますが、それでも一見の価値はあるかも。

歴史のテキストについては、『本当にあったのかよ!?』という、ごもっともな疑問が常に存在するもんですが、そういうテキストとの付き合い方を学ぶには最適な本かと思います。

また、著者が一貫して証拠重視なためか、全体を通して高い論理性をキープしており、特に客観的に見た批判材料によるFAQなど、文章の書き方としても参考になりそうです。